須藤凜々花主人公論
須藤凜々花が好きだ。
Gossip Girlという海外ドラマがあった。
陳腐な物語だが、チャック・バスという支配的で傲慢な登場人物がこんなことを言う。
『ルールは破るものだな。何も失わずに済む』
これを体現したのが、第9回AKB選抜総選挙の壇上で結婚発表して世間を賑わせた須藤凜々花である。
「成功者はいつも抜け道をいく」という話も、耳にしたことがある。
人生には、二つのドアが用意されている。
一つ目のドアは、才能や金銭や家柄など、とにかくずば抜けて秀でたもののために用意されている。このドアをくぐることができるのは、神に選ばれたわずか一握りの人間だ。
二つ目のドアをくぐらんと、それ以外の人間たちは必死で群がる。小さなドアに何億という人々が列をなし、汗水流してラットレースに励み、ついには自分の順番が来る前に死んでいく。
そんなとき、革新的な成功者はいつも、第三の抜け道を使う。
第一のドアに選ばれることなく、第二のドアに並ぶことなく、
小さな抜け穴を悠々とくぐり抜けていくのだ。
そして気づけば、群がる人々の先頭に立っている。
さて、毎年開催されているAKBグループの総選挙。
5ちゃんねるの地下板では「少女残酷ショー」とも呼ばれ、
投票結果に一喜一憂する少女たちの姿が鑑賞されている。
さて、この少女残酷ショーにおいて、
最も搾取されすり減らされているのは誰だろう?
CDを大量に購入して運営に搾取されるヲタ、という構図は想像しやすいだろう。
しかし彼らは、少女たちを鑑賞する対価を支払っているに過ぎない。
少女残酷ショーの入場料は、安くはないのだ。
多額の金銭を支払って深入りするほどに、オタクはショーの特等席に自分の姿を見出している。
自らより好んでコンテンツを消費することは、果たして『搾取』と呼べるだろうか。
AKB選抜総選挙。
まさに、第一のドア=圧倒的な美貌や才能に恵まれなかった少女たちの、第二のドアを目指した出口のないラットレース。
総選挙順位の先にある何かを求めて、回し車をひた走る。
もはやグループ内序列の先に何もないことは、少女たちも薄々勘付いているだろう。
それでも、回し車を回すのだ。
ほかに居場所がないから。
さて、ルールを破った須藤凜々花は、悠々と第三の抜け道をくぐっていった。
彼女の最大の強みは、『リスクをとれること』であるだろう。
若くしての結婚も、迷うことはない。
目に見えない「いつか」のために温存するなんて、彼女の精神に似合わない。
須藤凜々花は、これからも第三の抜け道をくぐり抜けていくだろう。
そして凡人に憎まれながらも、彼女にとっての成功を掴みつづけていくだろう。
なぜなら彼女が、『人生を危険にさら』しているから。
いつだってこんなリスクを選ぶ厳しさと激しさが、物語の主人公には必要なのだ。